2017年2月23日木曜日

「全員野球」の秘密 ~集団フローが生まれる10の条件~

先日このブログで取り上げた「フロー」。集団でも起こることが確認されています。フロー状態に達している集団は周りがアッと驚くパフォーマンスで課題を乗り越えます。よく高校野球の解説で、スター選手の存在無しに勝ち上がるチームのプレーを「全員野球」という言葉で表現することがありますが、一体なぜそのようなことが起こるのでしょうか。集団フローがもたらされる条件を確認することで、その答えが見いだせるかもしれません(スポーツ関係者の方には馴染みのある事柄だと思います)。

以下に紹介するのは、フロー理論提唱者のチクセントミハイとキース・ソイヤーの研究結果です。ジャズアンサンブルのグループ、劇団、ビジネスチーム、スポーツチームを対象にした調査に基づいて集団をフロー状態に導く10の要素がまとめられています:

1.適切な目標の共有:集中を引き出す明確な目標であると同時に、それぞれの創造性を引き出すある程度の自由度を含んだ目標であることが大切。

2.深い傾聴:集団フローは波乗りのようなもの。各々が準備したシナリオに基づいて行動するのではなく、お互いの言動に全意識を集中させ、それに反応する形でアクションを起こすことが必要。

3.常に前へ:「Yes, but・・・」ではなく、「Yes, and・・・」で進めていく。相手の意見をまずは受け入れ、その上にアイデア構築する姿勢で物事を進めていくことで、予想もしなかった道が開かれる。

4.完全な集中:全員の完全な集中を引き出すために、やるべきことに意識を注ぐことができるよう、メンバーそれぞれが他の活動から距離を置くことが効果的。

5.場をコントロールしている感覚:場をコントロールできている感覚を持つと同時に、仲間に意識を向け、集団に起こるフローに身をゆだねる柔軟性が必要。

6.エゴの融合:エゴを抑制し、自分の主張と他者の傾聴のバランスを取る。

7.対等な関係性:すべてのメンバーが同等な役割と対等な関係性を通して活動に参加する。一部の支配的で傲慢なメンバーの存在はフローの妨げになる。

8.親密さ:暗黙知で通じ合える関係性が生産性の向上と効果的な決断を促す。一方で、相手に対して批評的なフィードバックを即座に与えることも、フローをもたらす重要なポイント。

9.コミュニケーション:会議の場ではない、仕事時間外などの自然の会話の中で、フローに至るコミュニケーションが生まれる。

10.失敗のリスク:ジャズアンサンブルのフローは、リハーサルではまず生まれない。フローが生まれるためには観客と、リアルな失敗のリスク、そして恐怖を手なずけて力に変えることが必要。

(出展:What Mel Brooks Can Teach Us about "Group Flow", Sawyer, 2012
  参照:「学びのキーワード」フロー理論 Ylab 東京大学 山内研究室

お互いの共鳴によって予期せぬ力や創造性が生み出されるためには、ある程度構成された場でありながらもそれぞれが柔軟に場に対応することができるバランスが大切なんですね。「全員野球」は偶然の産物ではなく、チーム活動をデザインする監督さんなどの采配が大きく影響しているのではないでしょうか。

*写真はハノイの地産地消レストラン。どんな集団にもフローは起こり得ます。

0 件のコメント:

コメントを投稿